小学館ファミリーネット 小学一年生

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第4話
「栄光のマイタグ」

タグラグビーは、正式には30メートル×40メートルのグラウンドをつかう。メンバーが5人と交代要員。コンタクト(人にぶつかること)は禁止で、タグと呼ばれるオビをとるとタックル成立、相手を止められる。

タグを5回とられるとボールは相手チームのものになる。おじさんこと鈴木雅夫は、初めての子どもたちにはパスを「たまご投げ」と教える。

「タグラグビーはこのたまごのボールを使います。たまごは落とすと割れる。だから、たまごのボールを落としたら反則なんだよ。割らないよう、大事にあつかうんだ。ほら両手で下から投げてごらん」

おじさんは、なるべくカタカナをつかわない。カタカナを使うと、スポーツがキライな子どもたちは引いていってしまうからだ。

「タグラグビーは大きなルールが4つあります。たった4つ。かんたんだよ。サッカーやバスケットボールより少ないんだ。サッカーみたいに足を使う必要はない、バスケットみたいにドリブルする必要もないんだ。たまごのボールを持って走るだけ」

おおきなルールは4つ。

「ボールを落としたら反則(ノックオン)。ボールを前に投げたら反則(スローフォワード)。相手にぶつかったら反則(バージング)。さいごの1つが女の子にいちばんお得なルール。うしろにボールを投げるとき、そのじゃまになる人は反則(オフサイド)だよ」

そしておじさんは最後にきまってこう言うのだ。男の子と女の子がいっしょのチームの場合、女の子がイチバン最初にボールをもらってください、みんなでパスをもらいにいってください、と。

「タグラグビーはみんなが活やくできるスポーツなんだ。チームメイトがこまっていたら、みんなで助けてあげよう。ひとりがたまごのボールを持ったら、全員がついていこう。トライも大事だけど、トライにつなげるアシストはもっと大事なんだよ」


子どもたちは遊びの天才である。公園では正式なサイズのコートはとれないけれど、小さいコートをつくれば、せまいスペースをねらってこうげきするようになる。わざとタグをとらせたところに、パスのうまい子がはいって、外側の足のはやい子にボールをわたす。

だいたいアヤカは最初にボールをもらう役目をするようになった。ラグビーのポジションでいうとスタンドオフみたいな、ゲームをコントロールする役目だ。そして走り役にはおじさんの長男、健太郎がなった。

アヤカは、相手のだれもいないところに健太郎を走りこませる。おじさんの長女で、小柄な陽子が追いかけてフォローする。

おじさんは思い出す。

「アヤカはちっちゃい頃からパスセンスがピカイチだったなぁ。相手がいない場所をパッとみつけ、そこにポンとボールを浮かす。しかも相手をひきつけて。判断がよかった。やわらかいステップをふにゃ〜ふにゃ〜と踏んで相手の注目を自分に集めて、外側の健太郎にパスすればトライ!」

1日に次から次に何試合もゲームをする。スコア(得点)をつける。さらにはA4のざら紙にトライとアシストの記録を「正」の字でつけるようになった。

たとえば、アヤカがトライを5本したら「正」となる。チームのメンバーは毎日、変わっていく。ただ記録用紙はとじていき、トライの数を通算で積み上げていく。

その数を競い合った。トライの数では、必ずタグ遊びに顔をだす健太郎がイチバン。「トライ王」だった。それをアヤカが追いかける。1か月ちょっとで、健太郎がまず通算「300本」を突破した。その直後、アヤカも「300本」に到達する。

トライの数が300本になると、『マイタグ』すなわち自分のタグをもらえた。柔道の黒帯、剣道の免許皆伝(めんきょかいでん)みたいなものか。『マイタグ』をもらうには、300本のトライをするほかに、コーチができること、キャプテンができること、レフリーができることの3つの要素も必要だった。

アヤカは、マイタグをもらった日をいまでもおぼえている。おじさんのおくさんの手づくりのマイタグ。みどり色のベルトの裏側に「あやか」とピンク色のひらがなで名前がかかれていた。

「すごくうれしかった。宝物ですね」

マイタグ、それはまぶしかった。

第5話に続く

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ラグビーガールズ 鈴木彩香 第4話「栄光のマイタグ」

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