小学館ファミリーネット 小学一年生

小学館ファミリーネット

第7話
「仲良し三人組」

小学校の放課後。

ランドセルを自宅の玄関に放り出し、アヤカは第二公園にいく。まだ友だちはだれもきていない。くつひもを結びなおし、ひとり、軽く走ってみる。ふと、春風をほおに感じる。

まだいくぶん寒い四月の風。新学期をむかえると、なぜか心がうきうきする。タグラグビーを始めて、次の年の春。またひとつ学年がふえた。すこしタグラグビーもうまくなった。パスのコツがわかった。

トライもたくさんとれるようになった。「トライ王」の証明、マイタグももらった。トライはたのしい。パスをつなぎ、友だちがトライをとるのも悪くない。

「アヤカちゃ〜ん」

マイちゃんだ。マイちゃんが公園にやってきた。一緒にタグラグビーをはじめた大の仲良しである。

渡辺舞。汐入(しおいり)小学校の同じクラスで、近所に住んでいる。よく笑う。どちらかというと、のんびり屋さんである。

小さいころから、からだが弱かった。たぶんタグと出会わなかったら、外で運動はやらなかった。家で絵本をみたり、人形遊びをしたりするタイプだった。でもアヤカと一緒にいつのまにかタグに熱中するようになった。

「おじさん、まだなの?」

「うん。まだ。じゃ呼びにいこっか」

ふたりはおじさんこと鈴木雅夫(すずき・まさお)の家にダーッと走っていく。

「おじさぁ〜ん」

玄関を開けて2、3度呼ぶと、「いるよ」とおじさんの声が返ってくる。消防署の夜きん明けのため、ちょっとうとうとしていたのだ。

「おじさーん、タグは?」

「わかってるよ。いまじゅんびしているところだったんだ」

「早くやろうよ。早く」

「オッケー。オッケー。じゃ、玄関の道具を持っていって」

アヤカとマイちゃんはボールとタグを両手で抱えて、公園へダッシュする。おじさんの家の子どもの健太郎、陽子もついてくる。陽子がチョコマカチョコマカかけながら、アヤカのからだにぶつかっていく。

友だちもどんどん集まってくる。公園のゴミをひろって、コーンを並べて、タグラグビーのスタートだ。まずはキャプテンを決めて、5人ずつのチームに分ける。アヤカとマイちゃんが同じチームになることもあった。

パスアウトで試合がはじまる。アヤカがボールを軽く投げる。「マイちゃん、いくよ」。マイちゃんが前にぽんとはじく。タグでボールを落とすと「ノックオン」という反則になる。よくボールを落とすマイちゃんのあだ名が『ノックオン大王』。

「まいちゃあぁぁぁん!」

アヤカの大声がとぶ。こわい。マジ、こわい。最後に“怒りマーク”がついているカンジがする。マイちゃんは背筋をぴんとのばす。

「ごめんなさーい。次はとるから」

試合中のアヤカはきびしい。ひとつ下の健太郎やオトコの子がどこにいればいいのか迷っていると、「こっちだろ」って怒鳴りながら、後ろから首根っこをつかんでひきずっていく。

オトコの子たちは小声でよくもらしたものだ。畏怖の念(いふのねん=おそれおののく気持ち)も込め。「おにばば」と。

すごいなあ、ってマイちゃんは思う。アヤカはリーダーだ。自分にはない強さがある。こわいけれど、たよりになる。いいところでパスをしてくれる。

公園にいると、タグラグビーに夢中になることができる。つらいこと、イヤなことを忘れることができる。

マイちゃんはひとり、つぶやく。

「あぁ、ここには自分の居場所があるなぁ」

じつは小学校のころ、家でおとうさんとおかあさんが時々、言い争いをしていた。理由はしらない。仲が悪くなった。家の中がさつばつとしていた。それって、すごく悲しい。

おかあさんがいなくなって、自分が買い物、そうじ、洗たくをした。昼の弁当はおにいちゃんがつくってくれた。

「家がごたごたで大変だったんです。いつも、ただ泣いていました。家にいたくないなあって。アヤカや友だちにもそんなことは言えなかった。でもタグにきたら、イヤなことを忘れてプレーできた。みんな、私を必要としてくれたんです」

マイちゃんにはもうひとり、大の仲良しがいた。同じトシのマリエである。山口真理恵。三人は家がちかく、いつも一緒に遊んでいた。交換ノートや交換マンガなんてものもやった。クリスマスには一緒に自分たちのクリスマスソングをつくったこともある。

マリエとは「好きな男の子」のため、バレンタインデーに手づくりのチョコレートをつくったことがある。途中で失敗した。

マリエはアヤカと同じように負けん気がつよく、自己主張がはっきりしていた。リーダーシップもあった。

マイちゃんの分せき。

「自分はけっこうマイペースだった。自分を引っぱってくれるのが、アヤカとマリエ。ふたりはモチベーションも高く、持っている運動能力もよかったの」

失礼ながら、三人を動物にたとえてもらうと、マイちゃんはパンダ、アヤカがライオン、マリエはチーターという。

やがて仲良し三人組はタグラグビーに没頭(ぼっとう)し、ミニラグビーや女子ラグビーで活やくすることになる。とくにライオンとチーターは日本代表にまで上りつめる。

おとぎ話みたいなストーリーである。もちろん、その過程は三者三様、いろんなことがあるのだが・・・。

第8話に続く

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【ラグビーガールズ 鈴木彩香】いつも仲良し三人組(中央みどり色ジャージーの後列左からアヤカ・マイ・マリエ)
▲いつも仲良し三人組
(中央みどり色ジャージーの後列左からアヤカ・マイ・マリエ)
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【ラグビーガールズ 鈴木彩香】コーチのおじさんと一緒に(後列右からマリエ・アヤカ・マイ・おじさん)
▲コーチのおじさんと一緒に
(後列右からマリエ・アヤカ・マイ・おじさん)
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【ラグビーガールズ 鈴木彩香】試合以外でも親友同士(左から2番目=マイ、3番目=アヤカ、4番目=マリエ)
▲試合以外でも親友同士
(左から2番目=マイ、3番目=アヤカ、4番目=マリエ)
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