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第二章・第4話
「鍛練の夏がやってくる」

初夏。

気のせいかな。アヤカの顔がたくましく変わっていた。

カラダもごつくなった。筋骨隆々というか、腕が太くなった。うわっ、でかっ、と驚けば、日焼けした顔を崩した。

「ははは。めちゃ太くなりました。最近は筋トレばっかりやってましたから。上半身って筋肉がつきやすいみたいで」

体重が1、2キロアップして、61~62キロとなった。2010年秋のアジア大会で痛めた右足付け根のケガは完治しておらず、いまだにリハビリに励んでいる。

ランニングはできる。7月上旬の日本代表女子の強化合宿にも参加した。ただ全力で走ることができない。トップスピードで力が入らないというのだった。

「7割、8割のスピードなら大丈夫なんです。無理してやれば、試合もできますが、まだベストのパフォーマンスはできません」

じつはアヤカはいま、『肉体改造』に取り組んでいる。ラグビー選手としてカラダをつよくするのだ。まずは体幹(たいかん)を鍛え、カラダの左右の筋力のバランスをよくしようとしている。

タイカン。聞き慣れない言葉だろう。何かといえば、人間のカラダの軸となる中心部分のことである。背中、骨盤、おなかなど胴体部分の軸をさす。

カラダを一本の樹木と考えれば、木の幹にあたるのが体幹となる。手足は枝葉。スポーツ選手に限らず、すべての人にとって、カラダを動かすための重要なキーワードである。

「その体幹がすごく弱いといわれたんです。体幹を鍛えなくてウエイトトレーニングやっても意味がないって。体幹つよくしないと、カラダの動きの中でプレーできない。プレーの幅がせまくなってしまう」

なるほど、アヤカのウエストは、カラダの他の部分と比べ、とても細い。やわらかいプレーにみえるけれど、時にはかよわい動きにみえることもある。つよさがないのだ。

体幹が弱いからなんです、とアヤカは苦笑する。首をかしげ、右手で左の肩のあたりをぎゅっとにぎる。

「わたしの左の肩、すごく張っているんです。ウエイトトレーニングの時、頭痛がするときがある。首と頭と肩がはって。朝おきると、張っているときもあります」

なぜかというと、左の肩甲骨(けんこうこつ)の動かし方がうまくないそうだ。左の腹筋がよわく、その分、左の肩に無理な力が入ってしまう。

「だから、左の腹筋ももっと鍛えないといけないのです。ささいなことなんですけど、すべてプレーにつながっているみたいで」

そう言いながら、アヤカは左手を空に伸ばし、右ひじを下げて、右足を突きあげる。

「こんな感じで体幹トレーニングするんです。おなかの筋力も。たぶん左右の(筋力の)バランスが悪いんですね」

自己分析がつづく。体幹がよわく、左右の筋力のバランスが悪いとどうなるか。たとえば、タックルに入る時、瞬時にカラダに力が入らない。すると、へたしたら、肩が外れてしまうと言う。たとえば、タックル練習を繰り返すと、ひどい頭痛がしてくる。

それはダメだ。だから、体幹を鍛える。肩甲骨の寄せ方と、腹筋の力の入れ方を同時にできるようなトレーニングをやってみる。難しくはない。でも簡単でもない。

アヤカはくすっと笑う。

「地道なことをコツコツと続けることが大事なんです。体幹を鍛えると、結構、いいこと尽くしですね」

アヤカは忙しい。関東学院大学4年生。勉強のほか、リハビリを週に3回、ウエイトトレーニングを週に4回、アジリティ(俊敏性)強化を週に3回、ランニング練習を週に2回、横浜ラグビーアカデミーでのチーム練習を週に3回やっている。

これに代表の強化合宿やビーチラグビー、タグラグビーの練習がはいる。

「夏は、めっちゃトレーニングしたいんです。自分を追い込んで。ちゃんと計画立てて、自分に厳しく、カラダを鍛えようと思っているのです」

21歳の夏。

『鍛練』の夏がやってくる。

第5話に続く

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ラグビーガールズ 鈴木彩香 第二章 第4話「鍛練の夏がやってくる」 ※写真はすべてイメージです。
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ラグビーガールズ 鈴木彩香 第二章 第4話「鍛練の夏がやってくる」 ※写真はすべてイメージです。
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ラグビーガールズ 鈴木彩香 第二章 第4話「鍛練の夏がやってくる」 ※写真はすべてイメージです。
▲灼熱の日本代表強化合宿で、束の間の休憩時間にパチリ。