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世間をあっと言わせた単行本デビューから半年。
中学生になった三船くんが、今、思うこと、感じていること。
その気持ちを言葉にして届けてくれました。


僕がよく行く書店では、ありがたいことに「12歳の空」が今も平積みになっています。四方を、有名作家さんの本に囲まれています。帯の写真の自分と目が合います。その都度思うことはさまざまで、写真の僕の表情も違って見えるのですが、いつも胸が高鳴ります。

「12歳の空」を読んで下さった方、興味を持って下さった方、ありがとうございました。もちろん全部ではないですが、新聞やテレビ、雑誌、ブログ等で「12歳の空」を紹介して下さった記事を拝見しました。ひとつひとつ、言葉を噛み締めながら読ませていただきました。感謝しています。

そして、この文章を読んで下さる方に、極めて個人的なことで申し訳ないのですが、ご報告があります。

─中学生になり、身長が3cm伸びました!
なにそれ! わざわざ報告すること? しかも、たったの3cm?
そうかもしれません。でも、僕にとっては大切な3cmです。

今年の3月、小学校を卒業しました。その2ヵ月後、「12歳の空」が出版された5月、僕は「もう1つの小学校」を卒業しました。2回目の卒業式はケースケや涼子ちゃん、そして、ハヤと過ごした小学校です。本の中で、小学校名の記述をしませんでしたので、今ここで「盛岡東小学校」と名付けます。

小学5年生で「ヘチマと僕と、そしてハヤ」を書き、さらにその続編2編を書き進むうち、僕は実際に通っていた小学校と、「盛岡東小学校」の2つの学校に在籍しているような気持ちで毎日を過ごしていました。
小説を書くときはケースケたちのクラスに入り込み、彼らのおしゃべりに耳をそばだてメモをする、そんな感覚でいました。ところが気がつくと、彼らは小説を書く時間以外でも僕の前に現れ、好き勝手に会話を始めました。

その状態はなぜか、僕が中学生になってからも続き……。

「ハヤはさ、東京に帰ったんじゃなかったの?こんなところにいていいのかなぁ。ねえ、ケースケ」
と、ケースケを振り返ると
「ほーんと、そうだよね」
ケースケはちょっと困ったように笑いました。

しかし、いつの間にか「ねえ、ケースケ」と話しかけても、「ほーんと」と答える声は消え入るように小さく遠くなり、申し合わせたようにハヤも僕の前に現れなくなりました。

ケースケたちは今、どうしているのでしょうか。

彼らは、「12歳の空」の中に─。

僕の部屋の本棚の、一番上に彼らはいます。
手に取りページをめくると、目を擦りながら起き上がり、そして大欠伸。
「よぉ!お前さ、ここの表現イマイチ、どうにかなんねーの?」
とハヤが言ったかと思えば、ケースケは行間に割り込み、
「ここに一文、足そうよ」
などと、屈託無く話しかけてきます。
「エラソーに言うな!」
怒鳴り飛ばそうかと思いながらも気になり、文章に目を走らせます。
「……。うん、そうだね。ご指摘ごもっとも!」
頭を垂れ、本を閉じようとしましたが、ついまた読み返し……それから、そっと本を戻しました。

本を開けば、いつでも彼らに会える。
僕の気持ちも、小学校の教室に立ちかえります。

でも、彼らの存在が日常から遠のいた今、僕が見上げている空は、「12歳の空」の中でケースケやハヤと共に見た空とは、違う色、違う形の雲、違う風が吹いています。

きっと、これが僕の3cmぶん。

今、僕の上の空は、絵の具を流したように、さらさらとどこまでも青く、様々な形の雲が浮かぶ賑やかな空です。この空のこと、そして空の下にいるボブのことも、いつか書けたらいいなと思っています。

ん?ボブって誰よ?
詳細は、「12歳の空」のあとがきをご覧いただければ嬉しいです。

三船 恭太郎