宮井紅於特設サイト トップページへ単行本『12歳の文学 第四集』
宮井紅於特設サイト トップ > 初めてのロングインタビュー
初めてのロングインタビュー

大賞を受賞した宮井紅於さんに受賞のよろこびと大賞作品『もちた』についてうかがいました。実は宮井さんは、昨年の奨励賞受賞者でもあります。2年連続の応募(今回は3作品も応募!)で、見事大賞を受賞。この1年の気持ちの変化や大賞作品を書くまでの経緯についても話していただきました。

宮井紅於写真

大賞受賞の一報を聞いて、まずはどのように思いましたか?

うれしいけど、ホントに自分でいいのかな? と最初はとまどいました。3つ応募した中では自分ではいいかな〜と思っていたんですけど……もっとうまい人がたくさんいるだろうなって。なので、時間が経って少しずつ「本当に賞をもらったんだぁ」とうれしく思ってきました。

応募した3作品は、いつ頃書いたのですか? また、『もちた』が3作の中で、手応えを感じていた理由をおしえてください。

1作目を書いたのは、5年生の最後の頃です。2作目はその直後から書き始めて、夏休みに書き上げ、そして『もちた』に取りかかりました。3作の中では、『もちた』が一番短い期間で書いた小説です。夏休み中だったので、時間に追われることなく集中して書けました。精神的に余裕があったのと、3作目だったので、書く勢いが出てきていて、とぎれず書くことができました。なので、3つの中では『もちた』が自分の中では、いいかな〜と思っていました。

『もちた』には、物語の重要な役回りとして「とかげ」が出てきます。とかげというモチーフは、どこから発想を得たのですか?

旅行先で白いとかげを見たことがあって、ああ、こういうのを題材に小説を書いてみたいな、と思ったのがきっかけです。そのとかげが手紙を運んでくるという設定は、こういうことが実際にあったらおもしろいのに、と思ったからです。


もしあんなとかげがいたら、きっと楽しいですよね。しかも「もちた」なんてカワイイ名前ですし。手紙を受け取った主人公も、すぐにもちたに興味を持ちますが、この主人公を大人の女性にしたのはどうしてですか? 難しくなかったですか?

いいえ。大人を主人公にした一番の理由は、自分にとって書きやすかったからです。それとこれまで書いたことがない人物を書いてみたいというのもありました。

具体的に、大人が主人公の方が書きやすかった理由とは?

もし子供が、手紙をつけたとかげを見たら、この主人公とは違う反応をすると思います。例えば、つかんで振り回したり、キャーと驚いてみたり。大人だと、ちょっと冷静にそのとかげを見るのかなと。でもまったく興味を持たないわけではない。主人公をそういう人物にしたかったんです。本当の子供ではなく、大人になっても子供の要素をもっているキャラクターが、『もちた』のストーリーに合っていたので書きやすかったです。

昨年(第三回)奨励賞を受賞した『桜国語辞典』は、等身大の(小6の少女)キャラクターが主人公でした。主人公のキャラクターや題材の選び方に変化があったように、ご自身も変化があった一年でしたか?

去年よりも本をたくさん読むようになりました。量もですが、ジャンルも幅広く読むようになったと思います。外国の小説だったり、時代小説だったり。それが書く小説に影響したのかはわかりませんが(笑い)。3作とも作品の中に「不思議」なものをひとつ入れたいな、と思って書きました。その中でも、何か普通とは違う要素を入れたいと思って書いたのが『もちた』です


宮井紅於写真

『桜国語辞典』も「桜の花びらたちがしゃべりだす」という、ちょっと不思議な物語でしたよね。

はい。物語に不思議さを入れたいというのは、好きというか、そこは前から変わりません。

とかげ(もちた)の設定も不思議でおもしろいのですが、主人公の同僚のキャラも独特ですよね。

母の職場の人たちをモデルにしました。こんな人がいそうだな、とかこんな人と喋れたらおもしろいだろうな、と思って書いた人物です。

主人公は「静」のイメージで、この同僚は「動」のイメージですが、そこは意識してキャラを作ったのですか?

特に意識はしてなくて、2人の関係性からなんとなくそうなったんだと思います。


主人公のキャラのモデルは? 宮井さん自身とか?

いえいえ…主人公のモデルは特にはいません。主人公のキャラクターを作る時、天然で、大人なのに子供っぽいところがある人にしようと思っていました。例えば、もし自分がその人の上司だったら“めんどくさいな”と思うような人物です。大人なのにどこか成長しきれていない人を描きたかった。読んだ人に、こういう人もいるんだなぁと思ってもらえたらいいなとも思いました。

なるほど。そういうちょっと天然キャラだから、手紙をつけたとかげと文通しようと思うんですね。その他、書いていて難しかった点はどこですか?

結末の描き方です。書き始めた時、こういう結末にしよう! というのはなくて、こういう感じに終わりたい、くらいの気持ちでした。ハッキリした終わり方は決めずに書き始めたので、最初に考えていた話とは、書いていくうちに変わっていった気がします。

あえて結末をハッキリ描写しなかったのは狙いですか?

実は自分の中でも「正しい結末」は出せていないんです。書き始めの頃は結末を(もちたの行方など)ハッキリ描けたらいいな、とは思っていましたが、書いていくうちに、そこは書かない方がいいと思いました。理由は、私が人の意見や感想を聞くのが好きなので、読んだ人がいろんな受け取り方をしてくれたらいいな、と思ったからです。


宮井紅於写真

小説を書いている時、心がけていたことと、書き方のスタイルをおしえてください。

私は思いついたことをひとつの作品に詰め込むようにしています。あれもこれも書くのではなく、集中して、そのひとつの物語をよりおもしろいものにしようと思って書き始めます。そして、ひとつ書き上げたら、次に取りかかるという書き方です。ノッてる時はとても楽しいんですけど、つまるとゲームに移って…また、思いついたら書くという感じでした(笑い)。

将来の夢は小説家ということですが、いつ頃そう思ったのですか?

4年生の頃に、友だちが小説家になりたいと言うのを聞いて、自分もそうだ! とハッキリ思うようになりました。

そのお友だちとは今も小説について話しますか?

はい。お互い「今、こんな話を考えている」、とかよく話します。書いたものを見せて感想を言い合ったり、本を貸し合ったりもします。

これまでの受賞作品の中で印象に残った作品は?

『蒼い瞳』(第二回・あさのあつこ賞受賞作/林慧子作)がおもしろかったです。この作品も私が好きな不思議要素が入っていて、学園ものでもあるので共感できて、とても好きです。


宮井紅於写真

今度は自分がたくさんの人に読まれる立場ですね。それについてどう思いますか?

自分の書いたものをいろんな人に読んでもらいたい、感想を言ってもらいたいと思っても、普段なかなか難しいので、今回の受賞でそれが叶うと思うとうれしいです。批判のような感想があっても、うれしいです。それだけちゃんと読んでいただいたと、受け止めたいです。

第五回に応募する人が、このサイトや大賞受賞作を参考にしようと読むと思います。経験をふまえ、どのように応募作に向かえばいいと思いますか?

書くことを“楽しみのひとつ”にすればいいのかな〜と思います。私はなにかもの足りない一日でも、小説を書くことでその日一日が楽しくなりました。『もちた』も他の2作も、楽しんで書けたことが良かったと自分では思っています。あとは、誰かに似せるのではなく、独自のものを書けば、読む人に自分の表現したいことが伝わるのかなとも思います。

宮井紅於写真

次はどんな小説を書きたいですか? アイデアなどありますか?

今は具体的には決めていませんが、次はもう少し深い人間関係をストーリーに取り入れられたらと思っています。

第二回大賞受賞者の三船恭太郎くんは、その後単行本(『12歳の空』)で新作を発表しましたが、宮井さんもそんな願望はありますか?

いいえ! 今は思いません。私はまだ、そんなに長い話も書けないし、自分の力がそこまでいっていないと思うので……。受賞はとても励みになりますが、責任のようなものも感じます。なので、これからもっとたくさん書いて、もっと書く力をつけないと! と思います。

ありがとうございました!


<撮影協力>
カフェ フルーク
東京都千代田区神田神保町1-18-5 1F/電話03-3295-1117
http://www.cafe-flug.jp/

AMULET
東京都千代田区神田神保町1-18 三光ビル1F/電話03-5283-7047
http://amulet.ocnk.net/