第七回 12歳の文学 受賞者の声が届きました!

大賞

「人形」
西堀 凜華(愛知県・小6)

にしぼり・りんか

2000年4月生まれ。
特技は、ヘアアレンジ。
趣味は、琴と読書。
好きな作家は、山田悠介さん、
綾辻行人さん。

「とても綺麗なお人形」
 アルフォンシーナを一言で表すと「綺麗」。ガラス越しの彼女は妖艶にさえ見える。
「ちょっと、凜華」
 その抑えられた透明な声に私はぴたりと止まり、辺りを見る。声の主を探して。
「ここだってば。こっちよ!」
 今度は先程よりも少し大きな声。私はやっと彼女だということを理解し、彼女を
キャビネットから出してあげた。重みは数瞬でなくなった。テーブルに立たせると、
コトリと音をたてた。
「何? アルフォンシーナ。今は皆出かけてるけど、あんまり声出しちゃ駄目だよ」
「ふん。気付かない凜華が悪いのよ」
「もぅ。本当にプライド高いなぁ。反省とかしたことないよね。で?何の用?」
 冬の洋間はびりびり寒い。私は足元のストーブだけで寒さをしのいでいる。
「ベティも出してあげなさいよ」
 上から目線だと呆れつつも、ベティを同じテーブルに立たせてあげた。
「アルフォンシーナ様……」
「そんなお辞儀なんてしなくていいのよ。ほら、今日は凜華のためにお祝いするんだから。
ね、顔上げて」
 アルフォンシーナは様付けで呼ばれるほど慕われている。ベティはパキッと音を上げて
折った腰を戻した。
「凜華さん、おめでとうございます。『12歳の文学賞』で大賞をとられたそうですね」
「おめでとう。良かったわね」
 優しく褒めてあげるところも好かれる理由かもしれない。
「わぁー。ありがとう」
「でもね凜華」
 ぴしゃりとした言葉に私は少しびくつく。
「私あんなひどいことしないわよ。あんたの所為で私のイメージが悪くなったらどうするのよ! 勝手におおいうの書いちゃ駄目よ」
「そんな! わたし達はアルフォンシーナ様を悪く思ったりはしません。アルフォンシーナ様は
お優しくて、思いやりがあって、とても素敵なお方だもの」
 アルフォンシーナはまあそれもそうねという顔で小さくうなずいた。
「でも私、大変だったんだよ? 全員分の髪型やら性格やら決めて……、声の高さや自分を何て
呼ぶかまで決めたんだからね!」
「はい。私見ていましたよ。毎日遅くまで頑張っているところ。下書き→直し→清書→直し……
と、本当に大変でしたよね」
「まあ、そうね。確かに頑張っていたわね。かけた時間は半月だって聞いたけど」
アルフォンシーナは一言多い。
「半月は頑張ったうちに入らないってこと?」
 アルフォンシーナはふるふると首を振って、違うわよと言った。
「さあさあ、素直に喜びなさいよ。今日は無礼講よ! ベティもアルフォンシーナって呼んで
いいわよ!」
 スッと両手を上に上げて言った。ベティはいやいやと手を振っている。
「そんな……。もったいないお言葉です」
「無礼講って、アルフォンシーナどんだけ偉いの……」
 アルフォンシーナはお調子者なところもあるのだ。声高に笑うアルフォンシーナとはにかみ
ながら笑うベティを見ながら、私もにこりと笑った。
 冬の洋間は少しずつ暖かくなってきた。久しぶりに子供のように笑うアルフォンシーナは
何だかとても可愛い。でもこんなこと言ったら、きっと生意気ねと言われてしまう。


優秀賞

「くもの糸その後」
仲川 晴斐(愛知県・小6)


なかがわ・はるひ

2000年4月生まれ。
特技は合気道。
趣味はプロレス鑑賞。
好きな作家は、星新一。

(受賞だって?本当かな?)
今もピンとこない。僕の家族もそうだ。
「くもの糸その後」は、僕が勝手に作った続編であり、そこに登場する仏っぽくないおしゃか様をとことんやっつけるはちゃめちゃギャグだ。こんな文章を学校の作文や感想文で書いたなら、必ず先生に呼び出されて、しかられるに決まっている。
それが12歳の文学賞では受賞。いいのかなあ。本当にもらっちゃって・・・。
過去の受賞者の文章は素晴らしい。
でも僕は外道で文章は邪道だ。文学って何なのかもわかってない。おしゃか様を冒とくしてると感じて不快なら読まないでください。読んで面白いと思ったら、おもいっきり笑ってスッキリしてください。
僕はまだまだ書くアイデアはあります。でも、残念ながら僕はもうすぐ13歳です。
小学館さん、12歳と言わず、13歳、14歳、15歳でもいいじゃない。文学賞を作ってください。そしたらまたくだらないギャグを山ほど送りますから審査してください。お願いします。

優秀賞

「コミック・トラブル」
松崎 成穂(広島県・小6)


まつざき・なるほ

2000年9月生まれ。
特技は、ピアノの即興演奏。
趣味は、読書とピアノを弾くこと。
好きな作家は、富安曜子さん、岡田淳さん、
ジャクリーン・ウィルソンさん。

「創作を終えて」
 寝ているときは、美里や杉山先生の夢ばかり見て、起きているときには、物語の続きばかり考えていた。
夏休みの間は、勉強なんてそっちのけでこの小説を書き続けていたし、旅行中でもおかまいなしに、
ホテルに帰れば小説用ノートの文字とにらめっこ、そんな生活だったから、私の頭の中は、他のことを
考えるすき間もないほどだった。
 とは言っても、最初のうちは、妄想の世界に入り浸れる楽しさを体のどこかで感じてはいたものの、
九月も終わりに近づくにつれて〆切とと枚数制限に苦しみ出して、何とか出し終わって一週間経った頃には、
小説のことなんてすっかり忘れていた。小六は忙しいのだ!
 だから、数ヶ月後、バレエの発表会から帰って来たとき、「最終候補に残りました」と留守電が入って
いるのを聞いても、「何だっけ?」と家族全員で、しばらく首を傾げてしまった。
 遅くなったが、登場人物に謝まっておきたいことがある。
「横田理恵さな、あなたを一方的に悪者にしてごめんね。いつか、あなたの事情も分かってもらえるような
物語を創ろうと思います」。
 最後に、私の作品を読んでくださった審査員の皆様、ありがとうございました。


あさのあつこ賞

「とある梅干し、
エリザベスの物語」
西田 咲(兵庫県・小5)

 私はこの物語をほとんどこの二つの物だけで書き上げた。それは『勢い』と『ノリ』だ。
 いや、この二つの物でしか書き上げられなかったかもしれない。と言うのも、この物語は
夏休みの半ばに思い付いたのを、二、三日で書き上げたからだ。そうでもしない限り、これを
書き上げるのは不可能だったと言えるだろう。だから私はあまりこれを読み返さなかった。
それくらい、勢いでしか書いてなかったのだ。
 それをいま読み返すと、自分の出来なさがありありと見えてきて、恥ずかしくなってしまった。
でも、こんな物語だからこそ、賞を取ることが出来たのかもしれない。そう考えると、この物語を
思い付いた私の頭とそれを何回も読み返さずそのまま応募した私に拍手を送りたい。えらい! 
パチパチパチ!
 最後に、小説を書くのを勧めてくれたお姉ちゃん、アドバイスをくれたお母さん、毎年
罰ゲームと勘違いするぐらいチョー酸っぱい梅干しを漬けるお父さん、どうもありがとう!

石田衣良賞

「僕と不思議な望遠鏡」
石本 紫野(東京都・小6)

9月30日、文学賞の締め切り当日、私は沈んでいく太陽に急かされながら、必死になってパソコンと向き合っていました。
「絶対に終わらせる!」そう思いながら物語を書いていました。今でも、どうしてあんなにギリギリで小説を書き終えることができたか不思議です。
でも、それは多分、12歳の文学賞がずっと前からの夢であり、宝物でもあったから、普段は絶対に見ることのできない私の力が、発揮されたのだと思います。
4年生の時、何げなく手に取った12歳の文学賞の本を読み、私と年が少ししか変わらない人たちが、今までに読んだことのないすごい小説を書くことができると知って、衝撃を受けました。
頭の中には「すごい」の一言しかなく、その瞬間から、私は12歳になるまでに絶対この賞に応募することを決めました。とはいうものの、これが予想以上に難しく、小説のことなんかすっかり忘れていました。
そして、気づいたのが小6の夏休み。慌てて小説づくりを再開し、終わったのが締め切りギリギリ。小説を初めて終わらせることができただけで、私は十分満足していました。
そこに思いがけない受賞のお知らせ。初めて書いた小説で受賞するなんて、私才能あるかも!? そんなことを一人で思っていたら、母に「人生そんなに甘くない」と言われました。それでも、私は売れっ子小説家になった、将来の自分を夢見ています。


西原理恵子賞

「運命の糸」
池内 陽(愛媛県・小4)

 世の中は一体どうなっているのだろう。毎朝目を通している新聞を見ながらふと考えた。
私達の周りには様々な問題が起こっている。”いじめ”だってその一つ。私の作品も…。
 受賞の知らせを聞いた時、何で? と思った。嬉しいとか、そんな気持ちよりも前に。
一次選考も通らないだろうと思っていた作品。審査員の方々に目を通して頂けるだけで嬉しいと
思っていた作品。小説を書き始めたのは昨年の夏頃から。鉛筆をひたすら走らせた。
まさか賞を頂けるなんて思ってもみなかった。
 家族も皆、信じられない様子。「こんな我がままな作品が?!」と。でも今にすればそれが
良かったのかもと感じている。受賞したことで少し、自分に自信がつき、励みになった。
またこれからも、自分の空想の世界を広げて作品にしてみたい。
 最後になりましたが、私の作品を賞に選んでくださった審査員の方々、本当に本当に有難うございました。

樋口裕一賞

「寄宿人の生活」
飯沼 優(群馬県・小6)

「やった!受賞したよ、桂斗君。」
そう言ってはしゃぐのは、今僕が寄生している少女だ。はぁ…それにしてもなんてことだろう。
僕の体験談が本になるとは…。寄生人のことは秘密なのに! あんなに止めたのに、この少女は書き上げてしまった。
まあ秘密を守らないで少女に話したのは僕だが。はあ…。
「もう、そんなに落ち込んでたら私の作品選んでくれた方々に悪いでしょ。ちゃんと感謝しなきゃ。」
…そうだな。こんな少女が書いた小説を読んで、評価してくれた方々、本当にありがとうございました。
『お前もお礼、ちゃんと言えよ。』
「わかってるわよ。皆さん、ありがとうございました。えっと…あと、桂斗君もアリガトね。」
小声で感謝された。僕?おい、少し照れるな。しかし、少女はもう何事もなかったかのように原稿用紙にむかって小説を書き始めていた。


宮川俊彦賞

「おとぎ話集」
村井 泰子(大阪府・小5)

由梨亜(以下:ユ):みんなぁっ!ニュースだよおっ!
健:なになにっ?
ユ:泰子が書いた小説が、賞に入ったんだって!
梨亜(以下:リ):ウソをつくんじゃないっ、由梨亜!
泰子(以下:ヤ):ひ、ひどい、リアおばあちゃん・・・。
真理亜(以下:マ):お母さん、ホントなんだって。でもさぁ、泰子・・・。ひとつ不満があるのよねぇ。
ヤ:は、はい、なんでしょうか・・・。
マ:なんで私が、悪役になっているのかしら・・・?ホントはとってもいいひとなのにさぁ・・・。
リ:アタシもあるよ。良い者役だけど、なんで性格がこんなに悪いんだ?
健:ボクもあります。なんでもっとカッコいいところを書いてくれないの?
ヤ:ゴゴゴゴゴメン!で、でも、真理亜さんのことは、ホントにごめんなさい。
でも、梨亜さんのことはホントのことだし、健くん、そんなこと言ったらイメージ崩れるからやめてーっ(汗)
リ:なんか言ったかぁ?
健:イメージが崩れる?どういうこと?
ユ:泰子、私を主人公にしてくれてありがとっ!
ヤ:どういたしまして☆え?もう、健くん、ホントにやめてっ!まあ、登場人物たちにはいろいろと不満があるようですけど・・・。私が賞を取ることが出来たのは、「十二歳の文学賞」という賞を見つけてくれたお母さんと、毎日私を支えてくれている、家族や友達、先生のおかげです。そして、私の作品を賞に選んでくださった審査員の方々に最大級の感謝をします。本当にありがとうございます!
リ&健:ボク、アタシのことを忘れるなぁっ!
ヤ:ゴゴゴメーンゴメーン!本当に、ありがとうございます!

読売新聞社賞

「クロ」
藤田 めい(青森県・小6)

「ったくも〜なんてことしてくれちゃってんだよ・・・・・・」
 俺のことを書いた小説が、何かの文学賞に入賞しちゃったらしい。それを知ったミュウは
「芸能事務所からスカウトされちゃったらど〜しよ〜♪」って浮かれていたがこれは・・・営業妨害じゃねぇか? 
うちの秘密がバレちまったら客怯えて減るじゃんか。最近繁盛してたのに。どういうつもりなんだよ。
いや確かに、悪い猫だって自覚はある。だけど、本編を読んでもらうとわかるだろ? 
俺は、人間の物欲を食べて生きているんだ。いくら妖怪だって栄養失調でダウンすることもあるんだ。ってことで、
『クロ』を読んじまったお前、この話の内容はゆめゆめ他の奴等に話しちゃダメだ。わかったな?
あ、そうだ、最後になったが、「応援してくれたお母さんとお父さんと弟、私の作品を賞に入れて下さった
審査員の先生方、『クロ』を読んで下さった皆様、有難うございました!」・・・・・・って作者が。