小学館ファミリーネット 小学一年生

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 「私、絵本を作ってみたい。」
私自身の名前を使った「名前絵本」の始まり
は、小学校一年生のときのことだった。
 読み聞かせの文庫に通っていた私は、たく
さんのすてきな本とのふれあいをしてきた。
そして、わたしもこんな本を作ってみたいと
思うようになったのだ。私は母がすぐに賛成
してくれると思っていた。しかし母は、少し
間をおいて、
「文庫の先生に相談してみようか。」
と言った。その時私は、少しでも早く本を作
りたいと思っていたので、しばらく待たなく
てはならないのがはがゆい気持ちだった。話
を聞いた文庫の先生は、本棚から一冊の本を
取り出して言った。
「初めての本には、この「名前絵本」がぴっ
 たりよ。」
私は、どんな絵本なのか全く想像できず、戸
惑ってしまった。
 本に目を通した母は、一年生の冬休みとい
う時期に合わせて、新年の目標を名前絵本で
作ってはどうかと提案した。早速、言葉探し
が始まった。私の名前「たけしたみう」の一
文字ごとに、その文字から始まる言葉や文章
を考えた。
「た」たくさん借りてたくさん読もう図書の
   本
「け」けんかをしたら素直に「ごめんなさい」
 名前の文字から始まる言葉探しは思った以
上に楽しかった。文字数の制限はなかったが、
少しでも自分自身が納得する表現にしたくて、
あれこれ考えた。言葉探しが終わったら、言
葉に合わせた動きの写真を撮った。「本を読
んでいる様子」や「弟と二人謝っている様子」
など。次はいよいよ製作。六色の色画用紙を
二つ折りにして、一枚ずつ左側に色紙を使い
ちぎり絵のようにしてひらがなで名前の一文
字を書いた。右側には、その文字から探し出
した言葉を書き、写真を貼り、絵を描いた。
最後はのりで貼り合わせ、表紙に「たけした
みうのもくひょう」と題名を書いた。背表紙
を付けて完成。とても満足した。完成した本
は、今まで読んだどの本よりもかがやいて見
えた。
 それから毎年、冬休みの作品として三年生
まで同じように新年の目標として作った。文
字に変化がないので、言葉探しはさらに難し
くなった。同じ言葉にしたくなかったからだ。
「し」失敗しても折れない心。逆上がりがん
   ばるぞ。
 四年生のときには目標を熟語で表現するこ
とにした。
「た」体力。欠席ゼロを目指して体力づくり。
 五年生では俳句を勉強した。一年は十二か
月。二か月ごとに区切れば六つ。私の名前の
文字数にぴったり合った。
「み」実のりし穂 すずめ飛び交い
    かかし立つ  (九・十月)
 国語辞典の付録にたくさんの季語がのって
いた。全く知らない季語も意味を調べながら
何日もかけて六句を考えた。
 先日、母になぜすぐに絵本を作らせてくれ
なかったのか聞いてみた。絵本を作りたいと
いう気持ちは大切にしたいが、一年生の私が
物語を考えるのはまだ難しい。中途半端で終
わっては意味がない。しっかり作り上げて達
成感を味わってほしかったのだという。名前
絵本で私と母の思いを形にすることができた。
 今、私の手元にある五冊の名前絵本。作っ
たときの思い出、そして完成させたときの達
成感。何より今、自分自身でも感じることの
できる、私の成長の記録。他の人にとっては
ただの絵本かもしれないが、私にとってはか
けがえのない宝物だ。そして、いよいよ六年
生。名前絵本も今年で一段落となる。
 卒業をひかえ、新しい世界に一歩踏み出す
このときに、未来につながる名前絵本を仕上
げていきたいと思う。
 私は「たけしたみう」という名前が大好き
だ。名前絵本に出会えたことに感謝したい。
「う」美しく 大きな羽根(ゆめ)を
    得て巣立つ

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