わたしの教育記録入選発表

平成21年度 第45回結果発表

●主催/日本児童教育振興財団 ●後援/小学館・教育技術研究所
特選【1編】 賞状と研究助成金50万円

書くことが好きになる児童の育成

〜新聞投稿を活用した作文指導を通して〜

【沖縄県名護市立大北小学校での取り組み 
儀間 奏子】


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特別賞【1編】 賞状と研究助成金20万円

通常学級において発達障がいの子どもと共に育つ学級経営

【岩手県久慈市立字部小学校 
櫻庭 育子】

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入選【3編】 賞状と研究助成金10万円

自分を見つめて学ぶ道徳学習

〜玲子さんに寄り添いながら〜

【長野県栄村立北信小学校 市川 勝】

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「学力ってなんだろう?」

〜子どもが仲間とのかかわりを通して、「自分の思い」を発展させ、自分らしさを表現する授業を目指して〜

【静岡県藤枝市立高洲中学校 佐藤 雅之】

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考える楽しさを味わう

〜共に考え共に学ぶ授業を通して〜

【愛知県名古屋市立東山小学校での取り組み 
永翁 寛晋】

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新採・新人賞
【2編】
賞状と研究助成金10万円

子どもたちの心に響く道徳の授業を目指して

〜「いのち かがやけ」の実践より〜

【広島県 広島市立彩が丘小学校での取り組み
川口 知佐子】

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「心」を育て合う学級づくり

【静岡県浜松市立広沢小学校 鈴木 里佳】

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【審査員】
50音順・敬称略
  • 兵庫教育大学学長………………………梶田 叡一 選評
  • 千葉大学名誉教授………………………坂本 昇一 選評
  • 政策研究大学院大学客員教授…………永井 順國 選評
落ち着いた着実な取り組みの数々
兵庫教育大学学長 梶田叡一

今年もまた優れた教育実践の記録を読ませていただき、充実した思いがある。

今回の学習指導要領の改訂は、ここ20年近くの表面的で無責任な「子ども中心主義」を清算し、もう一度教師が「師」として子どもの前に立つ、という決意を共有しよう、とのメッセージを込めたものである。いずれの記録もこうした方向に向け、地道な取り組みがされている。喜ばしいことである。

例えば、入選された市川勝さんの「自分を見つめて学ぶ道徳学習」は、子どもの学校生活での姿や日記等を通じて見えてきた姿を土台とし、挫折や弱さを描いた道徳資料を準備して自分自身を見つめ直させる、という配慮の行き届いた丁寧な取り組みとして印象深い。

また特選となった儀間奏子さんの「書くことが好きになる児童の育成」は、学習に対して意欲を示さない子どもたちに対し、新聞投稿を活用した作文を書かせるという活動を通じて、書く楽しさに目覚めさせていった取り組みであり、課題や場の設定に力量が窺われる。

特別賞の櫻庭育子さんの「通常学級において発達障がいの子どもと共に育つ学級経営」は、新たな形での特別支援教育への取り組みという今日的課題に対して、カードや合い言葉の交換を通じ、また発表し合う活動等を通じて入念に取り組まれたものであり、教師自身の学びの深め方が窺え、好感がもてる。

新採・新人賞の川口知佐子さんの「子どもたちの心に響く道徳の授業」も、鈴木里佳さんの「『心』を育て合う学級づくり」も、ベテランに劣らない優れた実践であり、これからの教育界を担っていく方々が着実に育ってきていることを実感させられた。入選された佐藤雅之さんの「学力ってなんだろう?」も、永翁寛晋さんの「考える楽しさを味わう」も熱意に溢れた実践であり、好感がもてる。

千葉大学名誉教授 坂本昇一

平成21年度の「わたしの教育記録」(第45回)では、小学校部門と新採・新人部門にすぐれたものが多くあった。

教育実践記録の場合は、はじめから時系列で記録して、その中に教師の感情移入を含めてしまうと、実践者のひとりよがりのようなまとめになってしまう。

儀間奏子先生(沖縄県名護市立大北小学校)の「書くことが好きになる児童の育成」が特選だった。(1)「書くことが好きになる児童の育成」、(2)「想いを綴る」、(3)調べたことを文章にまとめる」という流れの中に、新聞投稿を取り入れている。新聞投稿を活用して作文するという活動を通して、書くことの楽しさを味わい、自発的に書きたいという欲求の出ることを期待している。そして、自分の考えを伝え合える人間関係を築いていった記録である。

次に、特選を競ったのは、櫻庭育子先生(岩手県久慈市立宇部小学校)の「通常学級において発達障がいの子どもと共に育つ学級経営」でした。エンカウンターを取り入れて、”ありがとうカード”、”どういたしましてカード”の交換、道徳の副読本での「自己肯定感」、生活科の町探検の発表、いじめ防止、学習発表会での「いのちをありがとう」などである。

(1)入選の永翁寛晋(愛知県名古屋市立東山小学校)は「考える楽しさを味わう」の題名で、(1)体験的な活動を取り入れた教材の工夫、(2)グループ検討、(3)考えの共有、の三つの実践をしている。

中学校部門、佐藤雅之先生(静岡県藤枝市立高洲中学校)の「学力ってなんだろう?」は、この部門で唯一の入選だった。

新採・新人部門の川口知佐子先生(広島大学附属小学校)、鈴木里佳先生(静岡県浜松市立広沢小学校)の実践は、上記の「入選」に迫る立派な教育実践記録だった。

学力につながる「コミュニケーション能力」
政策研究大学院大学客員教授 永井順國

文を読めば、必ず何かものを考える。書くことによって一層よく考える。これに言葉のやり取りが加わればもっといい。新学習指導要領も、「言葉と経験」を最重要のキーワードに据えている。審査を終えて、このことの大切さを改めて実感している。

儀間奏子氏の「書くことが好きになる児童の育成」(特選)は、NIEの一環である新聞投稿を活用した国語の作文指導が、「伝え合える人間関係」の醸成や、他の教科にも好影響を与えたという点で出色の実践例だろう。

櫻庭育子氏の「発達障がいの子どもと共に育つ学級経営」(特別賞)の実践にも、「ありがとう・どういたしまして」カードなど子どもたちによるやり取りや発表がふんだんに盛り込まれている。

市川勝氏による「自分を見つめて学ぶ道徳学習」(入選)にも同様の趣旨が読み取れる。それ以上に、「道徳教育の前提は、子どもとの信頼関係である」ことを改めて確認したという。この気づきを今後も大切にしてほしい。

永翁寛晋氏の「考える楽しさを味わう」(入選)は、算数の授業で、「わかる・できる・考える」を超えて「発表する・理解する」ところまで追求している。コミュニケーション能力も視野に入れた算数教育は、PISA型学力観にも通じるものがあると言えよう。

佐藤雅之氏の「学力ってなんだろう?」(入選)は、美術科の授業を通じて「人間形成の学力」を模索したという点で、異色の実践である。「豊かな感性に導かれて、確かな知性を育む」側面があることを垣間見ることができた。

新採・新人賞の二人には、新人らしい新鮮さと同時に、新人らしからぬ力量をも感じさせてくれた。川口知佐子氏の「子どもたちの心に響く道徳の授業を目指して」は、資料づくりの作業のきめ細かさがいい。鈴木里佳氏の「『心』を育て合う学級づくり」は、国語・音楽・道徳を組み合わせて、スパイラルに心を育てていく過程が興味深い。

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