わたしの教育記録入選発表
平成22年 第46回結果発表
●主催/日本児童教育振興財団 ●後援/小学館・教育技術研究所
| 特選【1編】 |
賞状と研究助成金50万円 |
【新潟県 新潟市立新津第一小学校での取り組み
中村直也】
>>取材記をみる
|
| 特別賞【1編】 |
賞状と研究助成金20万円 |
【千葉県 筑波大学附属聴覚特別支援学校 山本 晃】
>>取材記をみる
|
| 入選【3編】 |
賞状と研究助成金10万円 |
【茨城県 土浦市立都和小学校 野上 孝】
>>取材記をみる
|
【岐阜県 各務原市立鵜沼中学校 村上薫子】
>>取材記をみる
|
【大阪府 大阪教育大学附属池田中学校 代表 上原昭三】
>>取材記をみる
|
新採・新人賞
【3編】 |
賞状と研究助成金10万円 |
【新潟県 上越市立大手町小学校 久保田春菜】
>>取材記をみる
|
【新潟県 上越市立大手町小学校 三星雄大】
>>取材記をみる
|
【広島県 三原市立須波小学校 山下喜子】
>>取材記をみる
|
【審査員】 50音順・敬称略 |
- 東京大学大学院教授……………………秋田喜代美
- 環太平洋大学学長………………………梶田叡一
- 千葉大学名誉教授………………………坂本昇一
- 政策研究大学院大学客員教授…………永井順國
特選受賞者・中村直也先生を訪ねて
「学習指導要領の意図を汲み、子どものノートを大切にしつつ…」

写真左から、鈴木剛校長と、特選に輝いた中村直也教頭。
新潟市立月形小学校に、特選に輝いた中村直也教頭を訪ねた。同小学校のある月形村は、広大な新潟平野の西部にあり、近くには国定公園で有名な弥彦山を控える。今は真っ白な雪の平野が広がるこの辺りは、米はもちろん、梨や苺など、果実の生産でも有名だ。
1月21日午前、同校を訪ねると、中村先生が鈴木剛校長とともに迎えてくださった。月形小学校は全校生徒数400人。現在は教頭という立場の中村先生は、学校経営の中心であるほかに、学級担任を離れた形で、時には3、4年の理科授業を持つことがあると語る。管理職になっても授業は大事にしたいとのことだ。
この度の応募のきっかけは?
「学習指導要領が変わったとき、まず出てきたのが“言語活用”。国語的視点からはわかるとしても、理科ではどうするのかと考えました。子どもの事実を見ながら、ああこれではダメだなと、いろいろ試行錯誤をしました。『教育技術』は、以前から読んでいますが、過去にも新潟県から受賞した同期が何人かおり、刺激を受けていました。」
普段心がけていらっしゃる指導のポイントは?
「子どもは、全く何もない状態からは書けない。何らかの手だてを示すことが必要だということですね。形を示して、イメージを持たせる。そして、自信を持たせてから、自由に書かせる。出来ない子には、フォーマットを見せる。出来てきたら、もういいかなと主体性に任せる。段階をレベルアップしていきながら、手を離します。」
こうした教育記録の発表や個人研究の意義については?
「校内研究には、複数の職員が互いの意見を聞きながらという良さがありますが、一方では、大勢なので方向修正がしにくい面もある。これに対して、個人研究は、方向転換がしやすい、フットワークが軽いというのがメリットでしょうか。」
校長先生のご感想は?
「良い実践は、教員全員で共有するのがいいと思います。埋めておく必要はなく、表にだすのがいい。同じ職場からの受賞は本当に嬉しいし、励みになる。近隣の小学校長からも、昨日お祝いの電話がありました。」
この後、前任校の新潟市立新津第一小学校へ移動し、長谷川義郎校長に同校での実践の様子をうかがった。
「中村先生は理科指導に熱心です。教務主任なので、クラスは持たず、高学年理科の専科でした。新しい学習指導要領が出るとすぐ、彼が中心になって、指導要領を頭に入れながら、頑張っていました。ノート指導には力を入れていましたね。予想を立てて、その後で振り返るというようなことをしていた。子どもの学習記録を大切にして、それをいつも遅くまで、忙しい中合間を縫って、ていねいに見ていた。人柄がよく、子供を惹きつける。明るさが全面に出ているので、彼の魅力に引かれて、ぐんぐん学ぶという感じですね。」
取材/編集部・横山英行
受賞のことば
筑波大学付属聴覚特別支援学校小学部教諭 山本晃

満を持して応募した「きょうのおべんきょう」プリントが受賞できて大変うれしく思っています。
聴覚障がいを持つ児童・生徒に接するには、視覚教育が大切になります。
そこで、その日の授業で予定している発問や学級通信の内容、宿題も含んだプリントを毎日配ることにより、教師―児童―保護者の間で、授業内容だけでなく、学校生活全般にいたるまでの情報の共有を図りました。
教師の負担は確かにありますが、おかげさまで子どもや保護者からは大変好評です。
発問を保護者に配布するということは、それだけ発問を事前にしっかり考えるということでもあります。
これからも、教師としての経験や実力をさらに高めるためにも続けていきたいと思っています。

教育の原点を見る
山本先生の授業を見学させていただきました。
児童は1クラス6名。子どもたちは、真冬にもかかわらずみな半袖半ズボンで元気いっぱい! 普通学級と異なるのは、全員が補聴器をつけていたことだけです。そして教室の壁を埋め尽くす紙、紙、紙! 視覚教育がもっとも重要だと語る山本先生の言葉が裏付けられる教室環境でした。
教室の最後列には保護者の方1名が座っていらっしゃいました。 聞けば、毎日交代で授業中の先生と子どものやり取りを記録していると言います。すべて「きょうのおべんきょう」プリントに反映するためです。 本当にびっくりしました。先生だけでなく、保護者も一生懸命に教育に参加していらっしゃいます。
その姿を見て、「障がい者教育は教育の原点」という言葉を思い出しました。
取材/編集部 石田 純
茨城県土浦市立都和小学校 野上孝先生にお会いして

1月19日の夕方、茨城県土浦市にある市立都和小学校を訪ねた。ちょうど下校時間であわただしい時間だったが、筆者の野上先生と校長の都賀和男先生が迎えてくれた。
野上先生は、特別支援学級「なかよし」(知的)の担任。学級通信に子どもたちの素晴らしさを紹介する実践を今年も続けているという。先生は、「心からの喜びや驚きをもって、子どもたちの良さを見つけたり、気づいたりしていきたい」と語る。教室には二年目に発行された「なかよし」が壁一面に貼られていた。昨年度の「なかよし」もファイルされて置かれている。子どもたちは毎日のように壁にある「なかよし」を見たり、うれしそうにファイルを読み返している。「なかよし」は子どもたちの成長をよろこび、励まし続け、子どもたちも「なかよし」の発行を心待ちにしているという。

みんなで作った花火の絵
黒板には「みんなの花火」と題された共同製作のはり絵が飾られていた。黒い模造紙を広げたときに、「これは夜空なんだよ。土浦の夜空にみんなで大きな花火を打ち上げよう」と言うと、子どもたちは大喜びで取り組み、素晴らしい作品ができあがった。
その後、花火の絵は職員室でも話題になり、給食の方や学童保育の方たちからも「きれいですね」と声をかけられたり、他のクラスの子どもたちが集まって来て、「すごいね!!」と感嘆の声を挙げたりした。先生はこれらの言葉や出来事を拾い集めて、「なかよし」に載せていった。こうしたことがどれほど、子どもたちの自信へとつながっていくだろう。「なかよし」は子どもたちや保護者だけでなく、先生たちや管理員さん、給食や学童保育の方たちなどの関心を集め、多くの人をまきこみながら広がりつづけているそうだ。
取材/編集部 山路正人
村上先生にお会いして

村上薫子先生の応募作は、その文章力が群を抜いており、個人的には下読み段階から「受賞確実」と予想していました。はたして入選された村上先生と授賞式でお会いすることができたのは、去る1月半ば。その文章の風韻から思い描いた通り、身辺に常にさわやかな風が吹いているようなお人柄で、よく動く大きな瞳と明るい笑顔が印象的でした。
「教科書だけでここまでできる」と再認識させてくれるその実践記録は、すべての古典教材の授業に通用するノウハウを含んでいます。
村上先生に別れを告げ、木曽川の急流も間近な鵜沼中学校の上に広がる晴れた冬空を見上げながら、戯れ句が一句、できました。薫風は夏の季語ですが、承知の上で、あえて。
薫風に背押され子らが仰ぐ空
取材/編集部 白石正明
大阪教育大学附属小学校
上原昭三先生を訪ねて
1月19日、中学の部入選の、大阪教育大学附属池田中学校の上原昭三先生を訪ねました。上原先生の実践は、題して「グラフ電卓で図形を作ろう!」。電卓を使ったゲーム形式の共同学習は、子どもが額にしわを寄せて考える「解析幾何」への気軽なアプローチとして、とても興味深い実践報告でした。
「本校では、数学に対する生徒の意欲を高めるための教材・教具の開発や授業方法の改善に取り組んでいますが、この実践もそのひとつです。一人ひとりが主体的に参加し、図形を完成させることで達成感を味わうことができたのではないでしょうか。これからも、よりよい授業作りをめざし、精進してまいりたいと考えております」(上原先生)。

取材/編集部 小笠原喜一
祝☆初の一校ダブル受賞!
新潟県上越市立大手町小学校 久保田春菜先生
新潟県上越市立大手町小学校 三星雄大先生

写真左から、久保田春菜先生、校長の加藤誠雄先生、三星雄大先生
〆切までの1週間、
職員室が一つになっての受賞でした
『わたしの教育記録』始まって以来の新採・新人賞同校ダブル受賞となった今回、なんと、二人がこの論文募集を知ったのは〆切の1週間前だったとのこと。地元の先輩が、「挑戦してみたら?」と、教えてくれたのがきっかけだったのだという。「一週間前かあ……と、少し戸惑いましたが、普段行っている実践をまとめるよい機会だと思って挑戦しました」(久保田先生)。「即、やろうと思いました。自分の所へ来た話や仕事は“10年は絶対に断るな”と、よく職場の先輩に言われていましたので……(笑)」(三星先生)。実は、大手町小学校の校長・加藤誠雄先生も、元受賞者。〆切までの一週間、二人の原稿は、職員室内のいろいろな先生が見てアドバイスしたのだという。「他の先生のアドバイスを聞いて、“あっ、この取り組みにはこんな意味があったんだ”と再発見することも多々ありました」(久保田先生)。元々文章を書くのが得意、と、校長先生も太鼓判を押す久保田先生は、比較的スムーズに論文を作成。一方、三星先生はプレゼン派、文章には少し苦手意識があった。「教頭先生に相談したら、ホームページに載っている昨年の受賞作を印刷して見せていただいて……それがとても参考になりましたね」(三星先生)。
そして、二人とも見事受賞! 聞いたときは……「〆切ギリギリでしたが、やってよかったと思いました。この学校は、やりたいことをやらせてくれる学校。受賞したのは私達ですが、職員室全体で受賞した賞だと思っています」(久保田先生)。「受賞の知らせを受けたときは、正直、賞金は嬉しかった(笑)。教師の“こうしたい”も決してつぶさない、大手町小学校だったからこそ、僕の取り組みも実現できたと思っています」(三星先生)。

地元紙「上越タイムス」にも大きく取り上げられました!
取材/編集部 福原智絵
広島県三原市立須波小学校 山下喜子先生
「あすなろカード」の実践

三原市立須波小学校は、国道一本隔てて瀬戸内の穏やかな海に面している。
一学年一学級の小さな学校で、山下喜子先生は唯一の二十代先生。先輩先生たちのアドバイスを受け、見守られながら、いかにも若い人らしい力一杯の指導を続けている。
夏休みに、「教育技術」誌の「論文の書き方アドバイス」や去年の受賞作を読みながら、一気に「あすなろカード」の実践を書き上げた。今回の受賞を『夢みたいです!」と語りつつ、「今年担任している二年生でもあすなろカードをやっていますし、これからもずっとずっと、改良を重ねて続けていきます!」とさわやかな決意を語ってくれた。
取材/編集部 箕形洋子
|
コンテスト情報にもどる